COLUMNコラム
農業によって自分も生き生き、地域も元気に
今回はプライベートで活動されている農業について、経営企画室の人事課に所属している川端さんにインタビューさせていただきました。
経営企画室人事課に所属しています。2020年4月に転職で入社して2年半、前職までの人事経験を活かしつつマネージャーとして、新しい人事制度の構築やコロナ過の中での働き方など制度改革に取り組んでいます。
大学時代の友人が長野県大鹿村に移住し、食堂をはじめた傍らに畑をつくり、そこで自ら育てた蕎麦を、自分で蕎麦打ちして提供しはじめました。そこに訪れ、蕎麦やブルーベリー畑の収穫の手伝いをするようになったのが、農業に触れるようになったきっかけです。
私の出身地である岐阜県岐阜市は地方都市ではあるものの、実家は城下町で周囲は住宅とお寺や神社ばかりで農地などなく、山や川など自然はありましたが、農業には縁もゆかりもありませんでした。しかし、その大学時代の友人の畑を何年かに渡って手伝うなかで、自分が携わってできた蕎麦の美味しさやその一連の体験の楽しさを初めて知り、農業に惹かれるようになりました。
また、その体験に起因している部分も大いにありますが、長年の東京暮らしの中で「田舎で暮らしたい」と思い描くようになり、「農業を学んでみたい!」という意欲が湧きました。そんな想いから農業を学べる場所を探していたところで出会ったのが、いま住んでいる練馬区が行っている「農の学校」という取り組みです。
練馬区民に農業の魅力を伝え、農業に関心を持つ区民の中から農家を支える人材を養成し、支え手を必要とする農家と繋ぐ取り組みです。
もともと東京23区中で最大の農地がある練馬区ですが、私が住み始めた頃からどんどん農地が減ってきている現状があります。練馬区としては、緑がある土地を残していきたい思いがある一方、高齢化など様々な問題で農業に従事する方が少なくなっている状況を改善するため、農家を支える人材を養成する場が「農の学校」です。
倍率2.6倍の選考に無事に合格し、農の学校での学びが2017年に始まりました。さらに応募していた区民農園の繰り上げ当選が重なり、小さな区画ではありますが、学んだことの実践の場を持つことができました。
初級・中級・上級というかたちで3年間、実地と座学で段階的に学んでいくことができます。実地では畝立て、マルチシート張り、播種、トンネル張り、支柱立て、わき芽かき、誘引、追肥……というような圃場で行う野菜作りの基本的な実技を行います。座学では野菜の種類による栽培方法の違いや種子の特性、農薬や肥料、土壌のPH、残存している養分についてなどの技術的な知識や、園芸療法や森林のことなど多様な知識を学びました。
初級コースを修了すると練馬区より「ねりま農サポーター」の認定を受けることができ、区内の農家でサポートを必要としている農家を紹介してもらえます。中級では様々な野菜の育て方を学び、上級になると与えられた個人区画で実践しながら、段階的に学ぶことができます。
農の学校2年目の2018年から現在まで、サポーターとして認定されたあとに紹介いただいた現在の援農先で月に2~3回、援農活動をしています。
具体的な内容としては、土づくり、育苗床作り、播種、トンネル・支柱張り、草刈りや中耕、収穫、出荷調整など多種多様なお手伝いしています。時にはトラクターやマルチャー、マニアスプレッダなどの農機も運転しています。
この援農先では、一般的に出回っていない固定種(昔から伝統野菜として栽培している品種)である「江戸東京野菜」(ねりま大根、亀戸大根、ごせき晩生小松菜、しんとり菜、内藤トウガラシ、品川かぶ等)も積極的に生産しており、練馬区が主催する「ねりま大根収穫体験」イベントも開催されるほどの練馬区でも大きな農地です。このイベントも区の依頼を受けてお手伝いしています。
他にも、最近では長野県富士見町で知り合った方たちが主催する「つくえラボ」という法人が行う田んぼオーナーなどの農業イベントにお声がけいただき、地域おこしにも参画しています。
この法人は「地域の元気を生み出す居場所づくり」を地域協働で実現することを趣旨としており、農業や古民家を拠点とした都市農村交流機会の創出や下水道から出た資源(肥料)を利用して農産物を生産する「じゅんかん育ち」により、脱炭素社会に向けた取り組みや地域経済へも繋げる循環型農業を目指しています。SDGsという観点でも、地域を盛り上げるという観点からも、とても素晴らしい取り組みをされているので是非何か力になれればと思っています。
ちなみにここで作ったお米はめちゃくちゃ美味しくて、白米食味値が85点を超えると極上と言われる中、ここのお米は87点。今まで食べたお米の中でも最高レベルです。
土に触れて食物を育てる面白みや楽しさを日々感じています。以前の自分と比べて、土に触れてより生活にハリが出た感覚があり、生き生きと生活できている実感がありますね。レジャーとして自然に触れることは好きでしたが、趣味とはまた少し違った形で、日常的に触れる自然に癒されています。その環境が身近にあることもとても有難いですね。
練馬に住んで30年弱の間に、だんだん農地がなくなっていくという状況を目の当たりにしてきたこともあり、身近に農地があるこの練馬区の環境を守っていきたいという思いとともに、地方の地域おこしの活動もさらに展開していきたいと考えています。
都市の中に緑があるということは、多少でもヒートアイランド現象を抑える効果がありますし、身近に生産された新鮮な野菜をすぐに消費できるため、流通面においてもCO2削減に繋がっています。
「援農活動」については、ボランティアや社会貢献活動であるという意識はありません。興味をもって参加した「農の学校」で学んだことを実践する場としてスタートした「援農活動」が、結果として振り返ってみると、練馬の都市農業を維持すること、自然環境を守ること、そしてそれがSDGsに繋がっているんだなと、思っています。「好き」や「興味」からはじまった活動であるということが、こうやって継続できている理由のひとつでもあります。
図:川端さんが感じられるSDGsへの繋がり
皆さんもいま自分自身が取り組んでいることが、少し見方を変えるとSDGsやサステイナブルな考え方に繋がっている部分があるのではないでしょうか。身近な活動の延長線上にあるSDGsに目を向けてちょっとだけ意識して行動することだけでも、SDGsの実現に繋がるはずです。