COLUMNコラム
災害時に必要とされる支援は、支援する相手によっても細かく変わります。
想定外のことも起きる災害時では誰しも避難は大変ですが、安全を確保しながら自分で避難することが困難な人たちがいます。
今回は、そんな要配慮者への支援について取り上げます。災害時に要配慮者にどんな支援を行うべきか、実際の事例を紹介しながら対応策について考えていきましょう。
要配慮者とは高齢者や障がい者、難病患者、妊婦、乳幼児、外国人などを指し、災害時に特別な配慮や支援が必要になる人を言います。
要配慮者はそれぞれの状況によって、災害時の避難、情報の把握、避難後の生活などに支障が出やすいため、細やかで適切な支援が必要となる立場の人たちです。
災害が起きた際、要配慮者の中で自力での避難が難しい人たちは「避難行動要支援者」と位置付けられます。
2013年の災害対策基本法の一部改正によって、各自治体(市町村)で対象の人たちの名簿「避難行動支援者名簿」を作ることが義務付けられました。
この名簿は、対象者を把握して避難行動を支援するための基礎となる重要な情報です。そのため、避難支援のために必要な情報を更新しながら関係者間で共有する必要があります。
いざ災害が発生した時に要配慮者へ行う支援として、どのようなことが考えられるでしょうか?
ひと言で要配慮者といってもその立場や状況はさまざまです。それぞれの状況に合わせたきめ細かな配慮が求められます。
障がい者の障害の種類によっても求められる支援が変わってきます。
例えば、視覚障害がある場合、災害時の状況によって点字ブロックが損壊したり、音響式信号機の稼働が止まっているケースも考えられます。電話やラジオ、インターネットなどが使用できずに音での情報収集が行えない場合に、いかに情報伝達するかなども検討せねばなりません。日頃から地域で適切な避難訓練を行って、連携体制をとることが大切です。
また、聴覚障害があれば、避難時に円滑にコミュニケーションがとれない可能性もあるでしょう。必要だと思われる支援内容などを整理し、まとめたヘルプカードを用意するなどの対策を行うことが考えられます。
高齢者の場合、体力面などの問題から避難が遅れる可能性が高くなります。避難場所や避難方法、安否確認方法などを事前にしっかり決めて、近隣住民や地域との連携で、できるだけスムーズに避難できるように訓練しておくことが重要です。
また、高齢者の場合は持病を持っていたり、介助が必要となっていたりする可能性も高くなるため、薬や介助用品をある程度は確保する体制づくりができると、より安心です。
療養に必要な医療品など、余裕をもって備蓄しておくことが大切です。
また、災害時には電力がストップすることも想定して、予備電源をしっかり準備しておきましょう。
さらに、避難のときに必要になる移動用具や支援者もしっかり確保し、日頃から避難のシミュレーションを行っておくと理想的です。
乳幼児や妊産婦の場合、避難の際のサポートのほかに、特に避難後の健康管理にも十分に留意する必要があります。通常の避難所ではサポート体制が不十分なケースも多く、母子避難施設などをしっかり用意して対応できると良いでしょう。
乳幼児や妊産婦の所在、心身の健康状態を定期的にチェックしましょう。妊婦健診や出産予定施設、乳幼児健診やそれまでの医療機関受診履歴を確認し、必要に応じて各種医療機関への調整なども行います。
また、特に乳幼児はオムツやミルク、清潔な哺乳瓶などの生活物資が不足しがちです。災害時に支援を行える物資を準備しておくことも大切です。
外国人の場合、災害時の情報把握がしにくい傾向にあるとともに、避難にあたっての円滑なコミュニケーションが難しいケースが発生しがちです。
言語カードなどの準備、支援に必要なことを整理し、いざという時にスムーズにコミュニケーションを図れるようにしましょう。
災害の備えは、自助・共助・公助の3つに分けて考え、行動することも大切です。それぞれの観点から、行政的な立場で要配慮者にできる支援はどのようなものがあるでしょうか?
自助は要配慮者やその家族が自ら行う防災対策です。日頃の備えとして、住宅の耐震化、家具の転倒防止、災害用品の備蓄、避難行動のシミュレーションなどが考えられます。
共助は近隣住民などが地域で助け合う行動です。実際の災害現場では、公助だけでは救助の人手が不足します。実際に近くに住んでいるからわかる情報も多くあるでしょう。地域の共助力の向上は、災害対策の重要なポイントのひとつです。
公助は地域防災計画の策定、避難行動要支援者名簿の作成、避難ルートの整備、避難所の確保、災害支援用品の備蓄などが中心です。さらに防災対策に関する情報提供、実践的な地域防災訓練を実施するなど、地域の共助力を促進させることも課題となるでしょう。
TSP太陽は防災に関しての事業に長年取り組んでおり、各自治体とのつながりも強固に築いてきました。また、阪神・淡路大震災や東日本大震災などの災害時には現地への支援も積極的に行っています。
そういった経験をもとに、より現実の災害状況を反映した実践的な訓練などの企画・運営が可能です。ここで、当社が取り組んだ事例をいくつかご紹介します。
2022年9月、千葉市の依頼を受けて千葉市蘇我スポーツ公園を会場に、九都県市合同の大規模な防災訓練を行いました。
この訓練では、マグニチュード7.3、市内最大震度6強の千葉市直下地震を想定して実施。
自助・共助・公助の理念のもと、市民の災害時の行動力や防災意識の強化も目的とされ、自治体と市民、防災関係機関が連携した内容となりました。
大阪府豊中市で、イベント「救命力世界一 チャレンジ防災フェスタ プッシュでギネスに挑戦」を開催。
内容は、心肺蘇生トレーニング・ボックスを使って、一度に最多人数で救命講習を実施するギネス記録に挑戦するというもの。
ギネスというユニークさでイベントの注目を集め、市民の救命や防災への知識と意識を高めることに貢献しました。
災害時に要配慮者への支援をするために公助の課題となるのは、以下のようなものが考えられます。実際に災害が起きたときに、要配慮者に行き届いた有効な支援が行えるように、実践的な対策を行っていきましょう。
【災害時の要配慮者支援:公助の課題】
1.避難行動支援に関する個別計画の作成
2.地域の共助力の向上を推進する
3.避難所でのケア、生活支援
4.民間企業などとの支援協力
2022年7月に総務省消防庁の依頼を受け、第6回緊急消防援助隊全国合同訓練を企画・運営しました。約5年に1回行われる緊急消防援助隊の全国合同訓練で「南海トラフ地震」を想定して実施。
よりリアルで実践的な訓練となるため、模擬ニュース映像も制作し、さらに実際に南海トラフ地震が起きたときのアクションプランの検証、災害時に関係する団体の動きの把握、消防庁のオペレーション改善も含めて、各関係拠点で複合的に訓練を行いました。
2020年7月の熊本県南部豪雨では、記録的な豪雨によって土砂崩れや河川の氾濫が起き、多大な被害が発生しました。
長年、災害支援に関わってきたTSP太陽では、避難所の受付、家財道具の一時保管場所、ボランティア団体の拠点などに活用いただけるように自社所有のイベント用テントを無償提供しました。
TSP太陽では、仮設避難所の設営や仮設住宅の施工も行っています。
歴史に残るような甚大な被害が出た2011年の東日本大震災においては、課題であった用地不足と一刻も早い仮設住宅の設置のために、輸送用のコンテナを活用する方法を考案しました。2・3階建ての仮設住宅は、全国初の事例となりました。
災害時は、さまざまな角度から要配慮者への支援が求められます。公助としては、実際の災害時に活きるような詳細な防災計画や地域への具体的な支援を行う必要があります。より有意義な支援が行えるように、事例を参考にしながら自助・共助との連携を図って必要な支援を具体化していくことが大切です。TSP太陽では防災に関わってきた実績から実践的な防災訓練や支援活動を行うことができます。今後も地域の防災力強化のために貢献していきたいと考えています。そのほかにも、当社の活動事例を下記に紹介しておりますので、ぜひご覧ください。