COLUMNコラム
許容範囲を超える観光客増で観光地・観光客の分散が課題に
TSP太陽株式会社(本社:東京都目黒区、代表取締役社長 池澤 嘉悟、以下「当社」)は、観光業にかかわる549名に“オーバーツーリズム”に関するアンケートを実施し、その結果を発表いたします。当社は昨年2月と10月にも同様の調査を行いました。アンケートの声を比較し、現在の観光業における課題と求められる解決策を明らかにしました。
【背景】
日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2024年6月の訪日外国人旅行者数は約313万人で、単月として過去最高を記録しています。上半期の累計は約1,777万人で、過去最高を記録した 2019 年同期比より 100 万人以上上回っています。※1
かつてない観光客増加により、日本各地でオーバーツーリズムが課題となっています。観光客が増え続ける現状において、オーバーツーリズムがどのように捉えられているのか、調査を実施しました。
3回目となる今回の調査は2024年7月16日に行い、全国の20歳から59歳の観光地・行楽地でお客様と直接やり取りをされている、飲食・観光・宿泊・娯楽業の従事者を対象に、インターネットリサーチを実施。549名の有効回答を集計しました。1回目の調査は、2023年2月21日~28日、2回目は同年10月11日~13日の期間で実施しました。
「『オーバーツーリズム』という言葉を知っていますか?」という問いに対し、「聞いたことがあり、意味を知っている」という回答は1回目の調査では33.3%、2回目は58.3%、今回は79.1%となり、約1年半で認知度が大幅に上昇したことがわかります。「聞いたことはあるが、言葉の意味までは知らなかった」は2回目の24.5から16.4%に減少、「聞いたことがない」は17.2%から4.6%まで激減しました。過去2回の調査と比較すると、観光業にかかわる従事者のなかでオーバーツーリズムという言葉の認知度が高まり、もはや社会現象化していることがわかります。
「現在と2023年を比較して、現状起こっている問題をすべて選んでください」という問いに対し、「混雑によるオペレーションの低下」(38.8%)、「交通機関の混雑」(32.6%)、「トイレの不足」(32.2%)、「治安の悪化」(27.9%)、 「騒音問題」(26.2%)が上位5項目を占めました。前回 の時点で回答者が多かった「外国人とのコミュニケーションが取れない」は26.2%から18.2%に、「マナーの違いによるトラブル」が23.2%から15.7%まで減少しています。この結果から外国人とのコミュニケーションにおける対策は一定の効果がみられることが分かりました。
外国人観光客向けの基本的な環境整備が整った一方で、「地元住民とのトラブル」が13.1%から16.9%に増加しました。2024年1~3月期の国内旅行消費額は4兆7,574億円となっており、2019年13.0%増に。※2 このように訪日外国人観光客だけではなく、国内旅行者も増加しているため、トイレ不足、騒音、地元住民とのトラブルなどが顕在化しているようです。
オーバーツーリズムへの対策として、職場・自治体が取り組んでいることについてアンケートをとったところ、職場においては「入場者の分散」が前回27.1%から44.9%に、「平日割引や土日割増料金の導入」は27.3%から33.6%に増加していることから、観光客の分散を図っていることがわかります。「繁忙期の人員増」は20.6%から29.8%、「入場制限(有料化/事前予約制など)」は26.8%から27.8%、また「待機列の設定」についても微増しており、その他、「シャトルバスの導入」は9.8%から17.3%になるなど、増え続ける観光客に対応するために、人海戦術で対策していることが明らかになりました。
自治体の取り組みとしては、「インフォメーションの設置」が26.2%から43.8%に激増。前回の調査時から引き続き「観光地の分散」は27.1%から36.3%、「観光時期の分散」は25.1%から29.0%、「平日の旅行を奨励」は21.7%から28.6%、観光税や宿泊税の導入は26.6%から28.4% 、さらに「ワーケーションの推奨」も18.0%から23.6%に増えていることから、2023年末から2024年上半期にかけて、多くの自治体で観光客分散のための対策を講じていることが伺えます。
職場での対策に対しての満足度は、「とても満足している」「少し満足している」という回答を合わせて前回は約60%を占めていましたが、今回は約80%とさらに満足度が上昇。自治体による対策に対しての満足度は、「とても満足している」「少し満足している」という回答を合わせて前回約65%から、今回は約80%に満足度が上昇。組織・職場の取り組みおよび自治体の取り組みに対する満足度はかなり高いようです。
今後の職場におけるオーバーツーリズムへの対策として求められることとして、人員増はもちろんですが、「平日割引や土日割増料金の導入」が21.9%から36.0%に、「入場者の分散」が21.2%から30.0%、「待機列の設定」が17.8%から26.0%、「入場制限」が17.1%から25.0%に増加。そのほかには「順番待ち表示ができるアプリの導入」 が13.7%から18.0%、「仮設トイレの設置」が7.5%から16.0%、「無料Wi-Fiの設置」は15.8%から20.0%、「地域住民の優先利用」は11.6%から15.0%に増えています。
自治体に求める対策としては「観光地の分散」は30.5%から36.9%に増加、「観光時期の分散」は33.9%から35.0%に微増、「(繁忙期・臨時)インフォメーションの設置」は26.3%から35.0%、「観光税や宿泊税の導入」が19.5%から34.0%に、「パーク&ライドの推奨」も17.8%から31.1%に増加しています。この結果から、観光客の分散のため、「平日割引や土日割増料金の導入」や「観光税や宿泊税の導入」など価格面で客数をコントロールしようとするだけではなく、地域環境や観光地の施設整備も求められていると推測できます.。
2023年度の「ユーキャン新語・流行語大賞」にも「オーバーツーリズム」という言葉がノミネートされるなど、観光客数の増加とともに「オーバーツーリズム」に対する問題意識を持っている人が増加しています。自治体・職場によるオーバーツーリズム対策がとられており、各種の取り組みが効果を発揮し、現場で働く従事者の方たちからの満足度も高まっています。今回の調査で自治体・職場に求められる対策として、外国人向けの取り組みはとくに増加していませんでした。この結果から、多言語表記や外国人スタッフの増員など、訪日外国人に対し、ある程度の対策がとられている と推測できます。
一方で国内外問わず、観光客が増加したことにより観光客分散を図るさらなる取り組みを求められていることが判明しました。駐車場やシャトルバスの増設への要望は増えていませんが、割増料金や観光税の導入など、料金を高く設定し、観光客数を絞りたいのではないかと推測できます。こういった結果から昨年10月の調査時よりも一層強く観光客の分散が求められていることが判明しました。
観光客の分散が急務となっている現在、まずは局地的に観光客が集中することを避け、順番待ちシステムの導入や、待機列の指定など人員をコントロールすることが肝要です。大規模イベントも数多く手掛ける弊社は、人が集まる現場での対応も数多く経験しています。その経験を活かし、スムーズな人員誘導で混雑や地元住民とのトラブルを未然に防止します。さらに観光やイベントに役立つ情報や、チケット・グッズ販売・モバイルオーダーなどの機能をひとつにまとめたオールインワンの総合WEBアプリ「Compass」を利用することで、利便性を拡充しストレスなく観光を楽しめます。
また「ナイトタイムエコノミー」の充実で日中の観光客の分散 を図ることも可能です。「水都大阪・見守り隊イマーシブクルーズ」では専用の船舶による航行と共に、様々な映像、光、音のコンテンツが追従し、常に演出に囲まれた没入感あふれる「イマーシブクルーズ」を展開。また奈良の平城宮跡歴史公園で開催した「天平ウォーターシンフォニー」では、歴史ロマンあふれる復元遣唐使船前でウォータープロジェクションを行うなど、夜ならではのエンターテインメント体験を提供しています。当社は豊富なイベント経験を活かし、人員コントロールだけではなく、デジタル技術を活かした多彩なオーバーツーリズム対策をご提案いたします。
※1 「訪日外客統計」2024年6月推計値(2024年7月19日発表)
https://www.jnto.go.jp/statistics/data/20240719_monthly.pdf
※2 「旅行・観光消費動向調査」2024年1-3月期 報道発表資料
https://www.mlit.go.jp/kankocho/tokei_hakusyo/shohidoko.html