PROJECT実績紹介
IHIステージアラウンド東京
1300席という巨大な円形の客席自体が回転し、360度全方位を使ったダイナミックなステージが楽しめる劇場。
世界で2番目、日本で唯一の新感覚劇場「IHIステージアラウンド東京」は、国内のみならず世界中からも観客を集め、コロナ禍以前の段階で「来場者100万人」を突破。2017年のこけら落としから、瞬く間に東京・豊洲の名所になった。
プロジェクトの始まりは、TBSテレビがオランダのアムステルダムにある360度回転型劇場「Theater Hangaar」を見て、シーンの連続による没入感覚が素晴らしかったため、「日本でも作れないか」という発想だった。
「そこで、エンターテインメント施設全般のノウハウに長けている当社に声がかかりました」
そう語るのはTSP太陽株式会社 スペースEX部の高木淳一朗氏だ。
「回転する客席、これを『グランドスタンド』と呼んでいるのですが、こうした特殊機構の設計に関してはオランダの会社が担当しました。我々はそれ以外の部分、建物自体からグランドスタンドを設置する基礎、ステージ、構造計算と防災計画に関わる設計・施工までを担当しています」
メインとなるシアター棟は約4000㎡、これに741㎡のロビー棟と約331㎡の管理棟という3棟構成。「世界で2番目」という画期的な劇場だが、これを実現するのは特殊な機構だけではない。その機構を安全に稼働できる土台と建築物、日本のエンターテインメント施設に関する深い知見があればこそだ。
TSP太陽はこれまで、ステージと客席のある施設を数えきれないほど手掛けてきた。その確固たるノウハウが、「日本で誰も創ったことのない」劇場の誕生を大きくサポートしている。
「特に自治体との協議、防災評定にはなかなか苦労しましたね」と高木氏は当時を振り返る。
「防災評定」とは、対象建築物が建築基準法の防災関連規定や消防法に適合しているかどうか、安全性が確保された建物であるかどうかを示す評定のことだ。
「なにせ、日本初のケースですから。役所側も、グランドスタンドが回転したときの客席の向きと非常口の関係性がどうなるのか……などが分かり難かったようです(笑)。我々も、構造が極めて安全であることを示しつつ、非常時には観客をどう逃がすのか、逃げる際にはどれくらいの時間がかかるのかなどのシミュレーションを、3Dの図を用いたりしてしっかり説明させていただきました」
こうした尽力によって防災評定はスムースにクリアできたという。
日本初の回転客席、360度ステージ。あらゆる「日本初」を突きつけられながらも、2017年3月のこけら落としを無事に迎えることができた。あれから5年近くを経た現在も、豊洲の名所「ステアラ」と呼ばれ愛され続けている理由の一つには、TSP太陽のエンターテインメント施設に関するノウハウが随所に生かされているから――というのが確実にある。
- 【事業概要】観客席が360°回転するアジア初の没入型エンターテインメント施設
- 【施主】株式会社TBSテレビ
- 【場所】東京都江東区豊洲
- 【業務範囲】企画・デザイン 建築設計 施工監理
5680㎡ 鉄骨造
シアター棟 W56m×L70m×H16m 3920㎡
ロビー棟 W25.5m×L26.4m×H9m 741㎡
管理棟 W8.3m×L40m×H7m 331.5㎡