PROJECT実績紹介
練馬区酸素・医療提供ステーション
練馬区酸素・医療提供ステーション
(2021年9月17日~2022年11月22日)
「練馬区酸素ステーション」について、練馬区から最初に柳澤と猿渡のもとへ相談が来たのは、令和3年(2021年)の夏だった。
「『酸素ステーションを区内に作りたい』とのご依頼でした。すぐに打ち合わせをしましょうと。さすがに驚きましたよ。なぜなら、9月中旬に開所することは決まっていて、その日はたしか8月の下旬でしたから」(TSP太陽・柳澤)。
開設場所として廃校となった旧校舎が候補に挙げられていた。約3週間後にはその場所にある程度の規模の施設を開設しなければならないという。いわゆる”居抜き”で設営できるとはいえ、いくらなんでも時間がない。
しかし「練馬区さんは『それでもTSPだからできる』と信頼していただけたんだと思います」と柳澤は語る。
「もともと練馬区さんとは、最初にコロナ禍で大変になった令和2年(2020年)の頭から、コロナ関連事業のお手伝いをさせていただいておりました。まさしく今回の開設場所となる光が丘第七小学校跡地で、当社が設置・運営のお手伝いをさせていただいた『ドライブスルー型PCR検査場』(リンク= https://www.tsp-taiyo.co.jp/news/p167/)です。その後も、前述の『PCR検査場』の西武池袋線高架下への移設や、練馬区役所内の『ワクチン接種場』の設営も担当させていただきました。コロナ禍中は継続的に連絡を取らせてもらっており、我々は当時、コロナ関連事業を担当する地域医療担当部さんや健康部さんの一部、一員のような感じだったんです」(TSP太陽・柳澤)。
早速その日のうちに、柳澤と猿渡は区役所に向かって担当者と打ち合わせをし、翌日には開設予定地の小学校跡地への視察に向かった。東京都が渋谷区青山に酸素ステーションを開設していたため、区職員が渋谷へ視察に行くときには施設近くまで同行、リアルタイムで状況の確認をした。資料や写真・動画などを共有していただき、設営の参考にした。
「資材リストのようなものがあれば大変参考になったのですが、東京都さんも設営には紆余曲折あったようで『正確なものがない』とのことでした。ならば、あとは猛勉強しかありません(笑)。関係資料を片っ端から読みましたね」(TSP太陽・猿渡)。
そう語る猿渡も柳澤も、練馬区との一連のコロナ関連事業に携わっていたため、実は既にかなりの知見は備わっていた。担当する区職員の力を借りながら、そこから約1週間で仕様書の初稿を作り上げたという。
「こういった施設はグリーンゾーン(陰性エリア)とレッドゾーン(陽性エリア)、イエローゾーン(中間)を熟慮したレイアウトづくりが肝要です。医師からのエリア分けについてのアドバイスも取り入れ、校舎の間取りを活かしつつ、非感染者、感染者の動線に細心の注意を払いながら設計しました」(TSP太陽・猿渡)。
ここからは早急に必要な資材を搬入し、各部屋へ配置していく。設営のスピード感はTSP太陽の本領だ。できうる限りのマンパワーをつぎ込み、急ピッチで工程を進めていく。
外観に関しても近隣住民への配慮は忘れない。
「あの頃、コロナはまだまだ得体の知れない恐怖の存在です。だから、住民の皆様には外から見えてはいけないものは決して見えないように配慮しました。すべての窓にカーテンを架けることはもちろん、敷地全体を高い仮囲いで囲ったり、救急車の搬入口もテントを建てて、救急車からストレッチャーが降りてくるのを見えないようにしました」(TSP太陽・柳澤)。
こうした配慮も、前述した『ドライブスルー型PCR検査場』設置の際に抵抗感を示していた近隣住民へ、時間をかけてご理解いただいたという経緯が活かされている。
「最後に設置が終わったのがレッドゾーン(陽性エリア)のナースステーションでした。最初の患者さんが入所される30分前。ギリギリでした……(笑)」(TSP太陽・猿渡)。
設営が完了したのは令和4年9月17日。開所日当日だった。
こうして、約3週間前に初めて視察した「酸素ステーション」が練馬区内に誕生し、ここから14ヶ月の間に1000人以上の人々を助けることになる。
このように、ここ数年はコロナ関連事業の分野においてもプロフェッショナルを発揮するTSP太陽だが、イベント会社である同社が”イベント以外の事業”でも必要とされるようになったのは、一体いつからのことなのだろうか。最後に二人に問いかけてみた。
「イベントにかかわらず『災害があったときには、何か人のためになることをしよう』という観点は、当社は昔からアイデンティティとして持っていました。古くは阪神淡路大震災、そして東日本大震災、近年では熊本地震でもTSP独自の経験と技術を活かして貢献してきたという歴史があります。イベント業で長年蓄積してきたスピード感と、どの分野でもコーディネートできる調整力は、社会貢献に大いに生かせるものだと自負しています」(TSP太陽・猿渡)。
「その通り、社会貢献はTSP太陽のイズムです。コロナ禍になってすぐの頃、当時の能村社長(現会長)が『うちはコロナ関連の事業は積極的にお手伝いしていこう』と旗を降ったのは英断だと思いますし、一方で『社員を危険にさらすわけにはいかない』とコロナに関する事業に消極的になる企業も正しいと思います。しかしながら、我々は社会貢献を選ぶ。前者に舵を切る企業だということです」(TSP太陽・柳澤)。