PROJECT実績紹介
チームラボ & TikTok, チームラボリコネクト:アートとサウナ
展覧会「チームラボ & TikTok, チームラボリコネクト:アートとサウナ」
(2021年3月~11月 東京都・港区六本木)
2021年3月22日から11月23日までの約8ヶ月間、東京・六本木のけやき坂下は、感度の高い全国のサウナ愛好家たちの間で賑わっていた。
彼らが目指していたのは、六本木のど真ん中に突如出現した900㎡の大型仮設テント。この中では「チームラボ & TikTok, チームラボリコネクト:アートとサウナ」と銘打たれた最先端のアート展が開催されていた。「チームラボリコネクト アートとサウナ」とは、サウナと冷水シャワーによる温冷交代浴の効果によって研ぎ澄まされた感覚でアートを鑑賞するという、まったく新しい展覧会だ。
ところで、サウナの温冷交代浴効果は、サウナで身体を十分に温めたのち、冷水で急激に冷やすことによって得られるといわれている。頭がすっきりしたような気持ちになり、感覚が鋭くなる。いわゆる「ととのう」と呼ばれるこの状態でアート作品を鑑賞してもらうことで、観覧客はより深く世界観に没入できるという。
このプロジェクトはサウナ業界からも高い評価を受け、その年の優秀なサウナ施設や取り組みを表彰する「サウナシュラン2021」の特別賞に、全国の名だたる名サウナと肩を並べて選出されている。
「企画が立ち上がったのは2020年6月の事でした。元々別コンテンツのイベントをテレビ朝日様が所有するけやき坂下の土地で実施予定でしたが、コロナ禍となり一度に多くの来場者を集められないことから、企画を変更し期間限定でチームラボさんによる”サウナに絡めたアート展”を開催したい、と相談を頂きました」(TSP太陽 寺野)。
将来的にビルが建設される予定の期限付き遊休地。六本木の中心地でありながら、しかも高級レジデンスが建ち並ぶ住宅街。短期施工、撤去が可能な仮設テントであることは必要条件であった。
さらには、900㎡の大型仮設テントにサウナ施設を建築するということは、全国でも事例がなく前代未聞であった。その領域においてTSP太陽がこれまで積み上げてきた仮設建築のノウハウが最大限活かされたのである。
前代未聞のコンセプトゆえ、TSP太陽にとってもサウナの設計・施工は初めてのことだった。
「一つ間違えば大事故につながりかねないうえ、温度と湿度の管理が肝となるサウナ設計ですからね。サウナ機器メーカーとして全国展開するメトスさんに監修に入っていただいて、仮設建築にマッチしたサウナ室を模索しました。結果、3月から11月までの約8ヶ月間、大きなトラブルもなく、安全・快適に楽しんでいただけたと思います」(TSP太陽 石川)。
事実、前述の「サウナシュラン2021」特別賞を獲得したことで、来場者の評価、ならびにサウナしてのクオリティの高さは証明された。ただし「快適に楽しんでいただけた」と胸を張る裏では、”外気”そして、変わりゆく季節との、8ヶ月にわたる戦いがあったことも忘れてはいない。
「やはり仮設テントですからね。常設建築と違ってどうしても隙間ができてしまうんです。サウナは温度と湿度が大切ですから、外気の影響をなるべく受けないことが望ましいんです」(前出担当者)。
会期は、春から真夏を越えて初冬に至るまで約8ヶ月間。当然、気温も変われば湿度も大きく変わる。
常設建築ならば、厳重に密閉された壁を囲って一定のコンディションを保つことはたやすいが、期間限定で解体することを前提とした仮設テントではまったく勝手が違う。サウナ室に限ったことではなく、テント内は夏には暑くなるし、冬は寒い。この課題をどう乗り越えていくべきか
――それは、「日々の管理」という泥臭いものだった。
テント内では常に室温・湿度を監視しながら、手動でエアコンの調整をした。サウナ室のコンディションを保つために、扉の開け閉めにさえ敏感に対応した。湿気の多い梅雨の時期に結露ができれば、その区画に駆けつけてサーキュレーターで対応した。
「結局、我々にできることはこれくらいなんですけどね……」と担当者は笑うが、仮設テントを熟知しているからこそ、この泥臭い方法が最善であることを知っている。
常設の有名サウナに行き慣れたサウナ愛好家さえ唸らせたクオリティには、スタッフのこんな見えない努力もひとつの要素として加わっていたことは特記しておきたい。